心臓カテーテルの使用物品の概要についてお話します。 ガイドワイヤー について中心にお話します。
なぜ⑧ではなく、⑨かというと実は⑧で造影上における冠動脈の見分け方について書き進めていたためです。すぐ⑧を出します。
前回まではこちら。
カテーテル検査
物品
- シース
- 0.035inchガイドワイヤー
- 診断カテーテル(LCA、RCA用)
- 造影補助物品(三連管またはインジェクター)
薬剤
- ヘパリン加生理食塩水
- 冠拡張薬(ニトログリセリン等)
- 局所麻酔薬
- ヘパリン
シース
シースに関してはこちらを参照してください。
0.035inchガイドワイヤー
全日本心臓カテーテル意味わからん選手権上位に食い込んでくる物品がこちらです。
0.035inchという部分と、ガイドワイヤーというどちらもとっつきにくい部分がある物品です。
テルモさんから画像引用:https://www.terumo.co.jp/medical/equipment/me199.html
0.035inchとは
まず0.035inch部分についてです。
Frやcmで語ってたのに唐突にでてくるinch(インチ)表記です。
1inch=25.4mm
ですので、0.035inchワイヤーは約0.89mmのワイヤーです。
しかし、mm換算を覚えることは全く意味がありません。
inchで呼ぶことしかありません、inchで覚えましょう。
実際によく使われるワイヤーは0.014、0.018、0.021、0.025、0.035inchです。
これらは、0.0の部分を無視して、いちよんわいやー(0.014)、さんごーわいやー(0.035)といった呼び方をします。
臨床のコツ
このinchに関して臨床において、すこしコツがあります。
臨床において困るケースとして、シースを入れ替える際に、ダイレーターに何inchのワイヤーが入るのかという部分です。
テルモさんのシースを例に出しますが、実は同じシース長、同じFr数でもダイレーターに入るワイヤーのinchが異なります。
カテーテル検査からPCIに移行する際(ad-hoc PCI)にシースを小径のシースから大径のシースへ入れ替えるときがあります。
この際、0.035inchワイヤーをいれたままシースを交換するため、0.035inchが通るダイレータが同梱されているシースを選択する必要があります。施設ごとに用意されているシースが異なるため、よく物品を把握することが大切です。
心臓カテーテルの歴史
少し話は脱線します。
臨床で使われるワイヤーはほとんどinch表記がなされ、シース、カテーテル関係(ガイドカテーテル、尿道カテーテルなど)はFrです。
ちなみに、シースはFr表記なのに、シースに同梱されているワイヤーはinch表記で、シースの長さはcm表記です。
3Fr=1mm
なぜこんなに表記がいっぱいあるのかというと、おそらくカテーテルの始祖はイギリス(inch)で、
その後フランスでジョセフ=フレデリック=ブノワ・シャリオールがFrを開発しこの人がカテーテル関係を開発したので、それにまつわるものはFrで表記されています。
その後ドイツ、アメリカと心臓カテーテルの研究が進み、現代に至り表記の統一を図ろうとmm等も使われるようになってきていると思われます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/カテーテル
https://ja.wikipedia.org/wiki/ジョセフ=フレデリック=ブノワ・シャリオール
ガイドワイヤー
ガイドワイヤーとは
話はもどります。0.035inchワイヤーはガイドワイヤーとも呼ばれます。
PCI時バルーンやステントを運ぶガイドとなる0.014ワイヤーもガイドワイヤーです。
モノを運ぶためのガイド(道案内)となるものはすべてガイドワイヤーと呼ばれます。
0.035ワイヤーですと、診断カテーテルや、ガイディングカテーテルを心臓までガイドするガイドワイヤーですし、
0.014ワイヤーですと、ステントやバルーンを病変までガイドするガイドワイヤーです。
そのため、今なにをしているのかを理解しないと、先生が指すワイヤー頂戴という意図がわからないということになります。
つまり物品をただ覚えるのではなく、手技を理解するのが大切です。
0.035inchワイヤーの種類
0.035inchは大きくポリマーコーティングワイヤーと、スプリングワイヤーに分かれます。
ポリマーコーティングワイヤー
その名の通り親水性ポリマーコーティングを施されたワイヤーです。水に濡れるととてもヌルヌルするので、ヌルワイヤーともよばれます。
水に濡らさないと、コーティングが剥げてしまう弱点があります。
これの代表製品として、テルモさんのラジフォーカスや、アルトさんのスワンエクセルワイヤーがあります。
特にこのスワンエクセルワイヤーはその形状もとても優秀で、血管損傷のリスクがとても低いです。また、初めて使った人はそのヌルヌル具合がすごくて、ワイヤーが収められているケースからとりだしているつもりでずっとワイヤーを引き出せないなんてことも笑い話であるくらいです。
スプリングワイヤー
こちらは、芯となるワイヤーの周りにワイヤーを巻きつけ、バネのようになっているワイヤーです。イメージはトイストーリーのスリンキーが巻かれているワイヤーです。このことによりただのワイヤーとくらべて、強度と柔軟性が向上しています。
比較的、コシが強く物品を楽に進めることが可能です。
まとめ
- カテーテル検査に使う物品は意外と少ない
- ワイヤーはinchで覚えよう
- 自施設のシースラインナップを覚えよう
- 1inchは25.4mm,3Frは1mm
- 物品だけでなく、手技を理解する努力をしよう
- 本当は診断カテーテル物品について全部書こうとしましたが、長いので次回以降にします。
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