心臓カテーテル の基礎⑥セルジンガー法と穿刺部位

虚血
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心臓カテーテル の基礎シリーズです。

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穿刺とは

穿刺(puncture:パンクチャー)とは、せんしと読み、針をさすことをいいます。

水疱をプンクするといった言い方を聞くと思いますが、あれはpunctureから来ています。ドイツ語のPunktionが由来ってのもあるようです。どっちかというと、ドイツ語のが先っぽいですが。

プンク | 看護師の用語辞典 | 看護roo![カンゴルー]
プンク(ぷんく)とは、穿刺を意味する用語である。ドイツ語のPunktion、英語のPunctureに由来する。

循環器領域では、動脈穿刺のことをAパン(えーぱん)といった略し方をすることがあります。

穿刺法

シース(イントロデューサー)とは

テルモ様から引用:https://www.terumo.co.jp/medical/equipment/me207.html

CAGやPCI、EVTの際、対象にアクセスするためには、血管にシースという筒を挿入しておく必要があります。

これは簡易的にものを出し入れするための扉のようなものです。

シースは非常に優れもので、一度挿入してしまえば血が漏れる出ることなくものを出し入れできます。

しかし、あくまでもであるため、いきなりこれを血管に挿入することはできません。

そこで登場するのがセルジンガー法です。

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セルジンガー法

セルジンガー法とは、単に針を刺すだけではなく、ワイヤーを道しるべにモノを進めていく手技のことです。

セルジンガー法
セルジンガー法
  1. サーフロー針(外筒がついているタイプの針)を血管に穿刺する。
  2. 外筒を残し、針(内筒)のみを抜き去る。
  3. この時血液が逆流してきます(逆血)。これが大事。
  4. ワイヤー(シースにはいっているワイヤーなのでシースワイヤーということが多い)を外筒内へすすめる。
  5. ワイヤーが血管内にあることを透視で確認し外筒を抜き去る。
  6. シースをワイヤーを頼りに進めていく。
  7. ワイヤーごとダイレーター(シースの芯)を抜き去る。ダイレータを抜いても逆血しない。

なぜセルジンガー法を使うのか?

あれ?ダイレーターが針でできているシースを作れば手間が省けるじゃん!

と思う方もいると思いますが、入れてるシースが6Frなら内径約2.0mm(メーカーによって微妙にことなる)、外径約2.5mm(メーカにより)。

後述しますが、穿刺部位の一つである、橈骨動脈の太さは2mm前後(https://www.jsum.or.jp/journals/26860)。

さて、そんなところに一回で、ダイレーターが針でできているシースでさせるでしょうか?何度もやってるうちにとんでもない血管損傷を起こすと思います。

加えて、入れる筒が長いというところにポイントがあります。

硬い針であると、血管を刺すことは容易ですが、血管内を安全に奥までしっかりといれることは難しいです。

一方ワイヤーであれば、血管を刺すことはできないが、血管内へ入ってしまえば針に比べ、血管自体を傷つけることなく(実は傷つけることもある)奥まですすめることが容易です。

つまり、先端が少しだけしか入っていない状態と、ワイヤーがしっかり奥まで入っている状態では長い筒を血管に入れるとき、どちらが安全に挿入できるでしょうかということです。

以上のことから、セルジンガー法を使用するのは安全性の担保ということがわかります。

なぜシースは長いのか

さて、今までの話をきくと、じゃシース短ければいいじゃん!

となるわけです。

しかし、考えてみてください、極論長い筒を心臓まで届けてしまえば、もうそこからは血管に引っかかったり、損傷のリスクを考えずにものの出し入れができるわけです。いわば、シースがながければワープゾーンが長いのとかわらないわけです。

高速道路を通るのと、一般道を通るのではどっちが楽ですか?ということです。

しかし、長すぎても、ワイヤーをとても長くしないといけない、挿入手技が煩雑になることに加えて、シースの強度が落ちる。というデメリットがあります。Frサイズが小さければ小さいほど、長いシースを作るのは大変です。そこで、今あるシースの長さに落ち着いているわけです。

穿刺部位

さて穿刺部位はいくつかありますが、よく使用されるのは大きく3つです。

  • 橈骨動脈(Radial Approach)
  • 遠位橈骨動脈(Distal Radial Approach)
  • 大腿動脈(Femoral Approach)

これに加えて上腕動脈穿刺(Brachial Approach)をする場合がありますが、合併症のリスクが高く、あまり使用はされません。

穿刺部位

橈骨動脈アプローチ

橈骨動脈アプローチは従来、CAGの際によく用いられていました。いまでも、CAG,PCI共に第一選択は橈骨動脈です。透析患者様では使用されません。

また、大腿動脈アプローチと比較し合併症が少ないことや、治療成功率の差が少ないこと、GlideSheathと呼ばれる6Frシースとほぼ同じ外径にもかかわらず、7Frシース内径用物品が使用できるシースといった技術の進化に後押しされています。

遠位橈骨動脈アプローチ

ここ最近増えてきているのが、遠位橈骨動脈アプローチです。これは「解剖学的嗅ぎタバコ入れ:スナッフボックス」と呼ばれる部位を穿刺します。詳しくはこちら

https://www.anatomy.tokyo/systematic/系統2-循環器系/系統2-7-上肢の脈管/解剖学的嗅ぎタバコ入れの構成と橈骨動脈/

ここであれば仮に閉塞といった合併症がおきても、透析に影響はないことから、従来、大腿動脈アプローチしか選択肢のなかった、透析患者様にも使用されています。

大腿動脈アプローチ

これは従来、PCI時や透析患者様のカテーテルの際に使用されていました。いまでもComplex PCI(難しい治療)の場合使用されています。また、TAVIやECMOでは21Frといった太いカニューレを挿入することも可能です。

8Frシースといった太いシースを挿入するために用いられますが、スレンダーPCI(低侵襲カテーテル:スレンダークラブはこちらhttps://slenderclubjapan.com)の台頭から徐々に橈骨動脈アプローチに移行しています。

穿刺部位使用可能Fr
橈骨動脈7Fr(7FrGlide)
遠位橈骨動脈5Fr(5FrGlide )
大腿動脈21Fr(人による)
上腕動脈8Fr
まとめ

穿刺の実際

橈骨動脈穿刺

実は、橈骨動脈穿刺の時血管の後壁まで貫くことがあります。どちらかというと貫くことが多い印象です。

え?血液もれないの?と思いますが先程言ったとおり血管とほぼ同じ太さの管を入れるので、ほとんど血が漏れてこないんです。

わかりやすくいうと、皆さん動脈切ったらどこを抑えますか?切れてるところより上流を抑えますよね。細い血管に同じ太さのシースが入っているということは上流を抑えているようなものなのです。

ですから、橈骨動脈では貫いてもシースを抜いたあとしっかり止血をすれば、ほとんど問題にはなりません。

で、あれば貫いた方が簡単に刺すことができるのでこういった穿刺をする先生が多いです。

大腿動脈穿刺

一方大腿動脈穿刺は、絶対に後壁を貫いてはいけません。後壁を貫くことで血腫を形成してしまいます。これにより命に関わる合併症が起こりえます。

先生がたが穿刺をするとき必ず穿刺部位を透視で確認します。

どういった理由があるのでしょうか?

それについてはこちらで説明しています。

まとめ

  • 穿刺はパンクチャー。
  • セルジンガーは安全性の担保。
  • 穿刺部位は大きく3つ。
  • 橈骨は後壁パンクチャーすることがおおい。
  • 大腿動脈は絶対後壁パンクチャーはだめ。

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