今日は冠動脈の 狭窄率 についてです。こちらで触れなかった部分です。
今回も前回同様
こちらを参考に記載していきます。
狭窄率
0~100%の7段階で表している。というのが一般的な認識です。
狭窄の範囲 | 狭窄率 |
---|---|
0% | 0% |
~25%内腔が圧排 | 25% |
26~50%内腔が圧排 | 50% |
51~75%内腔が圧排 | 75% |
76~90%内腔が圧排 | 90% |
91~99%内腔が圧排 | 99% |
閉塞 | 100% |
みてわかるように、狭窄率 とは、表記されている%よりは狭くないということですね。
50%狭窄とされているとなんとなくイメージだと50%付近の狭窄をそういうのかなと思ってしまいがちですが、実際は
51%の狭窄具合でも表記は75%狭窄となる。
という点がこんがらがるポイントです。
図にするとこんな感じ
実は0%は存在しない
原文には0%という記載は存在しておらず、Nomalとするとなっています。
しかし、臨床では日常的に0%という使い方をしますし、PCIのときは90%狭窄が0%と使いますので覚えておきましょう。
Intact coronary
また、何も病変がない血管のことをIntact Coronary(いんたくところなりー)と呼び、Intact(いんたくと)と呼びます。
Intactって結構使いがちですが、CAGをする方で狭窄がない方はめったにいませんので、Intactとは言わずに有意狭窄なし(no significant stenosis)というべきです。
有意狭窄とは
狭窄率が75%以上のことを有意狭窄(significant stenosis:しぐにふぃかんとすてのーしす)と呼びます。
従来この75%以上狭窄に対してPCIが適応とされていましたが、今では単に有意狭窄というだけではPCIは施行されなくなっています。
造影上の狭窄度とは別に、機能的狭窄度という表現が使われます。
この機能的狭窄度には冠血流予備能という考え方が使われています。いわゆるphysiology(生理学:フィジオロジー)の分野です。
これについてはFFR、iFRといった臨床工学技士にとって非常に重要な内容になってきますので、別に機会を設けたいとおもいます。
動脈硬化性冠動脈疾患
そもそも狭窄は動脈硬化によるものですが、これが冠動脈の一部ではなく冠動脈全体に分布しているケースがあります。
こういった場合を特にcoronary atheroscleroticやatherosclerotic coronary(あてろすくろてぃっくころなりー)とまれに言ったりします。
99% delayって?
専門書などでは、99%と99%delayを分けたりすることがあります。
造影遅延
先にあげた表では、99%の部分において、造影遅延(slow flow)を伴うものがあります。
造影遅延とは、末梢まで造影が染まり切る時間が非常に遅い、他の血管に比べ遅い場合をこう呼称します。
造影遅延は、完全閉塞についで、造影上理解することのできる致命的な虚血であるため重症度が格段にあがります。
そのため、定義上99%だけど、造影遅延があるものを99%delayと区別するわけです。
AHAにおける99%
AHAでは、99%というのは、髪の毛くらいまで細くて、造影剤はすこし通る程度としているので、
99%はそもそもdelayしてるでしょ
って認識だと思われます。
なので、個人的には、99%はdelayしているものとして、レポートを書く時にわざわざdelayと記載しません。
狭窄率以外の表記
先のレポートに記載されているのは狭窄度の他に
表現 | 内容 |
---|---|
Nomal | 狭窄がまったくない |
Gives Collateral | 側副血行路(コラテラル)を他の血管に提供している |
Small | 低形成 低形成だけどNomalなのか、低形成で狭窄があるかの明記が必要 |
Filled by Collaterals | 側副血行路の影響で造影が不明瞭 |
Graftable | グラフト吻合に適している血管 バイパス術前精査や、バイパス術後精査の場合も記載 |
Absent | 存在しない 起始異常などの、奇形 |
このような記載形式も書かれています。
この中で日常的に使用されるのは、Nomal、Small、Graftableくらいです。
PCIの進歩によりGraftableという言葉は使われなくなってきているように思われます。
同一セグメント内で狭窄率が違う場合
例えば、#6をproximal,mid,distalと3つに分けた時#6proximalは25%だけど、midは75%なんだよな〜ってときがあると思います。
こういった場合は 狭窄率 が大きい方が優先する
と記載されています。
狭窄度はどの角度からきめるべきか
これに関して記載は見つけられなかったですが、診療報酬上では
一方向から造影して 75%以上の狭窄病変が存在する症例に対して当該手術を行った場合に算定する。
https://clinicalsup.jp/contentlist/shinryo/ika_2_10_1_8_1/k549.html
とされていますので、一番細い角度を探すのが重要だということがわかります。
ルーチンビューだけでは、本当の細さに気付かないことがあり得るということです。
角度によって狭窄率が変わる理由
このように病変が、丸い内腔を保ったまま全体的に狭窄していかずに、一部が極端に狭窄していく
偏心性病変(eccentric lesion:えきせんとりっくりーじょん)である場合
は、見る角度、方向により狭窄度は大きく変わってしまいます。
造影剤の抜け
先程説明した偏心性病変の場合、角度によっては二次元的に見た時に血管内径すべてが染まっているけど、一部が薄く抜けて見えることがあります。
このように辺縁がもやもやした画像が見えます。こういった像をhaziness(へじねす)だね、といったりhazy(へじー、へいじー)だねといったりもします。日本語では、陰影欠損像か、もやもや像、抜けてる像などといいます。
PCI の適応って
臨床では施設の方針による部分が多くありますが、ガイドラインが制定されています。
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2018/09/JCS2018_nakamura_yaku.pdf
治療適応
診療報酬で推測できます。
https://www.nmp.co.jp/sites/default/files/member/shinryo/2020/tensu/pdf/chapter2-10/2-10-1-7-2.pdf
1 .急性心筋梗塞に対するもの
2 .不安定狭心症に対するもの
3 .その他のもの
とされています。
1,2は省きますが、3その他のものの中
ア 機能的虚血の原因である狭窄病変
イ 区分番号「D206」に掲げる心臓カテーテル法における 90%以上の狭窄病変
ウ その他医学的必要性が認められる病変
以上が適応だと考えられます。
PCI か、CABG か
SYNTAX scoreなどを加味してハートチームで治療方針をきめる。ってとこです。
まとめ
- 狭窄率は7段階表記が一般的
- XX%狭窄はXX%以下の狭窄を指す
- 今は有意狭窄(75%以上)ってだけでPCIはしない
- 一番細いビューを探すのが技シの仕事。
- 見る角度って大事
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