本日は、Live demonstrationなどでは必ず見かける SYNTAX Score についてです。
SYNTAX scoreとは
簡単に言うと
冠動脈の病変って、冠動脈の形態や、病変の場所、数によって複雑さが変わるよね?それを定量化したら治療難度がわかって便利じゃん!
っていう指標です。
SYNTAX trialとごっちゃになって考えられてしまいますが、あくまでもscoreはスコア。
SYNTAX trial
じゃSYNTAX trialってなんなのよっていうと
このスコアを用いて、
PCI(DES)vsCABGの結果を比べたら結局のところどっちがいいの?
っていうのをn数1800っていう大規模で、今まで見たいにどちらかに有利になるような患者選択(除外基準)ではなく、一定の基準、ここでは主幹部病変か3枝病変なら対象っていう除外基準なしのオールカマーで行ったすごい試験。
ここで言う結果(一次エンドポイント)とは、全死亡、心筋梗塞発生、脳血管事故、再治療率。
いわゆるMACE(Major Adverce Cardiac Event:めいす)+脳血管関連死(Cerebrovascular)に加えたMACCE(Major Adverce Cardiac Cerebrovascular Event:こっちもめいすと呼ぶことが多い)です。
で、ざっくりいうと結局、
ハイリスク群(SYNTAX score高値群)に対するPCIはCABGより予後悪い
ってのが、SYNTAX 試験での結論です。
SYNTAX trial パターン分け
SYNTAX試験では、このSYNTAX Scoreの点数の大きさを、低スコア、中スコア、高スコアの3グループに分けられて評価されています。
低スコア:≦22
手技 | 一次エンドポイント(1年後) |
---|---|
PCI | 13.6% |
CABG | 14.7% |
中スコア:23〜32
手技 | 一次エンドポイント(1年後) |
---|---|
PCI | 16.7% |
CABG | 12.0% |
高スコア:≧33
手技 | 一次エンドポイント(1年後) |
---|---|
PCI | 23.4% |
CABG | 10.9% |
CABGではどのスコアでも、予後はあまり変わらないのに対して、
PCIでは低、中スコアに比較し高スコアは有意に予後が悪いです。
こうみると高スコアはCABGのが良いのかな−とも思いますが、論文の(Percutaneous Coronary Intervention versus Coronary-Artery Bypass Grafting for Severe Coronary Artery Disease https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa0804626)全患者において、脳梗塞だけをとってみるとPCI=0.6%、CABG=2.2%(p=0.003)と有意にCABGのが多かったりしますのでまぁなんとも言えない感じです。とにかくPCIは再狭窄率で負けてるって感じですね。
SYNTAX score 基準
さて本題の SYNTAX scoreにもどります
大きく、冠動脈優位性、病変部位、狭窄度、病変形態の4つに分けられ、病変形態は9つに細分化され、合計12項目を点数化しています。
冠動脈優位性と病変部位
さて冠動脈優位性のお話ですが、以前
こちらでお話した際に、少しふれましたが、後下行枝であるPD(posterior descending)を、RCAが出してるのか、LCAが出してるのか?ということで優位性を決めています。
さてここまで聞いておわかりいただけると思いますが、単にAHA分類でセグメントを分類していません。
AHA分類の流れを組んだARTS Studyでの分類方法を使用しています(画像引用:The SYNTAX Score: an angiographic tool grading the complexity of coronary artery disease)。
なので、どっちが優位か?を選択する必要があります。
そして、優位性に応じ、セグメントの点数が異なります。
この点数はLeaman scoreに基づき、冠動脈の左心室への血流量に応じ点数がつけられています。
簡単にいうと
RCA優位の場合、RCA=16%、LCA=84%(LAD:LCX=2:1=56%:28%)
LCA優位の場合、LCA=100%(LAD:LCX=66%:33%)
です。
狭窄度
これはAHA分類を使用しています。
有意狭窄(50-99%)と閉塞(100%)
で分けています。
有意狭窄のみの場合は簡単ですが、閉塞の場合はより詳しく形態が分けられています。
CTOなのか(閉塞3ヶ月以上)
Stumpの形状はBlunt(入り口がわからない感じのやつ、いわゆるno stump)か
Bridge collateralがあるか
どこから閉塞でcollateralでどこまで造影されるか
閉塞部直前に側枝はあるか
以上の項目です。
病変形態
分岐部なのか
分岐部の病変形態と枝の角度
Ao入口部病変か
屈曲性病変か
病変長は>20mmか
石灰化はどうか
血栓はあるのか
血管径は小径か、びまん性病変か
実際の使い方
後半はざっと説明しましたが、項目をすべて覚える必要はあまりありません。
Syntax Score calculator というものが存在しており、簡単にSYNTAX scoreを算出できます。
http://syntaxscore.org/(何故かSSLじゃないですが、個人的には問題なく使えてます。)
こちらのサイトから問われた質問通りに入力したら勝手にSYNTAX Scoreが算出されます。
SYNTAX SCORE II
SYNTAX scoreに加え、年齢、クレアチニンクリアランス、LVEF、左主観部病変、性別、COPD、PVD(末梢動脈疾患)、といった臨床的バックグラウンドを加味したSYNTAX Score IIと呼ばれる指標も使われだしています。
こちらも上記サイトから計算可能です。
こちらに関しては入力するとCABG,PCIどっちがオススメとまで出てきます。
まとめ
- SYNTAX試験での結果からは、高スコア(≧33)に対するPCIでは予後が悪い
- SYNTAX scoreの算出基準はそこまで覚える必要はない
SYNTAX試験10年後の全死亡で有意差はなかったり、デバイスの進化によってPCIでもCABGでもどっちでも変わらなくなってきているバル。
参考文献
- 5-Year Clinical Outcomes of the ARTS II https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20171036/
- The ARTS study https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10738354/
- Percutaneous coronary intervention versus coronary-artery bypass grafting for severe coronary artery disease https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19228612/
- Outcomes in patients with de novo left main disease treated with either percutaneous coronary intervention using paclitaxel-eluting stents or coronary artery bypass graft treatment in the Synergy Between Percutaneous Coronary Intervention with TAXUS and Cardiac Surgery (SYNTAX) trial https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20530001/
- The SYNTAX Score: an angiographic tool grading the complexity of coronary artery disease https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19758907/
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