心臓カテーテル の基礎⑩ AHA分類 SCCT分類 。冠動脈は#18まである!?

虚血
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心臓カテーテル の基礎 AHA分類 です。

解剖の話

今回の内容は、こちらを理解してから見るとわかりやすいので、ご一読ください。

この古いレポートを参考に書いていきます。画像もすべてこちらを引用しています。1975年から続く冠動脈の分類の話です。

A reporting system on patients evaluated for coronary artery disease. Report of the Ad Hoc Committee for Grading of Coronary Artery Disease, Council on Cardiovascular Surgery, American Heart Association:https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/01.cir.51.4.5?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed

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AHAとは

その前に、AHAについて少しお話します。

AHAとはアメリカ心臓学会(American Heart Association)の略称です。

American Heart Association | To be a relentless force for a world of longer, healthier lives
Learn more about the American Heart Association's efforts to reduce death caused by heart disease and stroke. Also learn...

このAHAは、一次救命措置(Basic life support:BLS)や、二次救命措置(Advanced Cardiovascular Life Support:ACLS)について勉強する際かならずといって目にすると思います。

BLS受講なら日本ACLS協会
アメリカ心臓協会(AHA)と正式に提携したBLS/ACLS/PALS/PEARSの国際トレーニング組織です。アメリカ心臓協会の一次救命処置をBLS、二次救命処置をACLS、小児・幼児向けのPALS、PEARS、また一般向けのハートセイバーA...

受講料が高いので、オススメはできません。病院で開催されているBLS講習等に参加するだけで個人的には十分だと思っています。

AHA分類

さて、AHAってなんとなくすごいなとわかったところで、本題です。

冠動脈についてAHAが分類したものは大きく2つあります。

  • 冠動脈を15分割したもの。
  • 冠動脈の狭窄度を0-100%の7段階に分けたもの

そもそも、患者さんへの説明につかうレポートとして使われる目的が大きいみたいです。

AHA冠動脈セグメント分類

通称AHA分類と呼ばれる冠動脈の分類ですが、先にあげたレポートでは左室の分類についてもかいてありますので、本来であれば、AHA分類というとどれを指すのかわかりません。

そこで、セグメントに関してのみ話すのであれば、AHA冠動脈セグメント分類として呼称する必要があると考えられます。ここでもそう呼称させていただいています。

画像引用:https://www.ahajournals.org/doi/pdf/10.1161/01.CIR.51.4.5

さて、よく目にするこの絵ですが、ホンマにわからん。というか、これみてなるほどねってわかるなら、もう勉強する必要なし。

以前も説明しましたが、これはanatomical positionからみた冠動脈を描いたものですね。それがわかると少し理解しやすくなるとおもいます。

右冠動脈:RCA

画像引用:https://www.ahajournals.org/doi/pdf/10.1161/01.CIR.51.4.5:と、実際の冠動脈造影
セグメント番号分け方
1右冠動脈入り口から、鋭角枝(acute marginal branch:AM)までを二等分した近位側
(この等分される位置に大きな右室枝がでている場合はそれを目印にしてもよい)
2右冠動脈入り口から、鋭角枝(acute marginal branch:AM)までを二等分した遠位側
3鋭角枝(acute marginal branch:AM)から後下行枝(posterior descending:PD)分岐まで。
4存在する場合、後下行枝(posterior descending:PD)
右冠動脈の分類

まとめると、このようになります。ちょっと冠動脈をしっている人はびっくりすると思いますが、実は臨床で参考にされているはずのこのレポートでは、4はPDです」と記載されています。

臨床では、#4AV,#4PLという表現をすることが多いですし、そうやって記載している専門書も多いです。世の中にあったように移り変わっていくものなので、#4AV、#4PL、#4PDとおぼえましょう。

左主幹部:LMT

画像引用:https://www.ahajournals.org/doi/pdf/10.1161/01.CIR.51.4.5と実際の冠動脈造影
セグメント番号分け方
5左冠動脈の入り口から左前下行枝と左回旋枝の分岐部まで
LMTの分類

これに関しては、LMT(Left Main Trunk)なんて単語でてきません。しかし、LMTという単語は臨床で常用されます。

右側に行くのがLADで、下に行くのがLCXです。

左前下行枝:LAD

画像引用:https://www.ahajournals.org/doi/pdf/10.1161/01.CIR.51.4.5と実際の冠動脈造影
セグメント番号分け方
6左前下行枝入り口から1st major septal(最初の大きな中隔枝)まで
71st major septalからLADに角度がつく(RAOからみたときに曲がってるとこ)場所まで。(だいたいこの角度は第2対角枝と一致することが多い。)角度がわからなかったり、対角枝が判別できないときは、LAD 1st major septalから先端までを二等分にした近位側
8前のセグメントからLADの終わりまで。
9LADの近位セグメント(6)から、でている一番大きい最初の枝。First DiagonalやD1と呼ぶ。これは、LMTからでている場合もある。
102番目の大きな枝で、LADの角度がついたところからでている事が多い。Second DiagonalやD2と呼ぶ。
LADの分類

中隔枝(septal:せぷたる、せぷたーる)分岐部奥までが6ってのがポイントです。

対角枝(Diagonal:だいあごなーる)は、分け方に関係ない。しかし、第2対角枝だけは、目印にしてもよしという感じ。ここも専門書によっては第2対角枝を目印にって書いてあります。

実際臨床では、RAO CranialからLADを見ることはあっても、RAOからLADを見ることはあまり無いため、第2対角枝を目印にした方が都合が良いから、そういう風に移り変わっていると思われます。

左回旋枝:LCX

画像引用:https://www.ahajournals.org/doi/pdf/10.1161/01.CIR.51.4.5と実際の冠動脈造影
セグメント番号分け方
11LCXの入り口から鈍縁枝(Obtuse marginal:OM)分岐部入り口を含んだところまで。
12鈍縁枝。一番太い心臓の縁を走行する枝。
13鈍縁枝(12)分岐部から、左房室間溝に沿って走行している枝。
14左室後側壁を走行する枝。多くの場合12より小さい。ない場合や複数ある場合がある。
15存在する場合、後下行枝。
LCXの分類

LCXのことを、サーカムフレックスや、サークとよぶこともあります。

ポイントは#15です。これは#4PDと同じ記述ですね。つまりこれは同じ場所を走行する血管なんです。

#4PDが存在している人は、ほとんど#15が無いといえます。実際に#15がある方は8%ほどとも言われます

#15を持つ場合の多くはRCAがが低形成(hypoplasty)と呼ばれる小さい冠動脈をしていて、LCXが支配的(Dominant)と呼ばれる大きい冠動脈をしています。例にあげているアンギオ画像はhypoplasty気味なLCXの画像です。

稀にどちらも大きさが同じ場合でも、#4PD 、#15があるように見える形成をしている方がいます。この場合、中隔枝がでているかどうかで見分けることができます。LADもPDも#15も同じ下行枝(Dessending)であるはずですので、心室間溝を走行しています。ここを走行しているということは、中隔枝をだしているはずです。

このアタリの解剖は後日詳しくします。

SCCT冠動脈セグメント分類

手書きですみません。

AHAの分類を踏襲したCTでの分類が存在しています。

それがSCCT(Society of Cardiovascular CT)が提唱する分類です。

AHAの分類に3つプラスする形で、16、17、18が存在します。

セグメント番号分け方
16AHAでは分類されていなかった4PLのこと。右後側壁枝。
17AHAでLMTから分岐するD1とされていた、LAD,LCXの中間から分岐する枝。中間枝。
18LCXから後側壁に分岐する枝。左後側壁枝。
SCCTにおける分類

#17は、臨床においても高位側壁枝(High Lateral branch:HL:はいらて、はいらてらる)と呼ばれる枝のことです。intermediate(いんたーめでぃえいと)と呼ばれることがありますが、これはこのSCCTと同様の呼び方ですね。どちらが先に言われだしたのかはわかりません。

このSCCT分類ですが、CT上での分類のため、心臓カテーテルのときはあまり使用されません。

臨床でのコツ

分類について

この分類方法は、欧米では、通用はしますがほとんど使われません。

図をみてお分かりの通し、RCAあるいは、LAD、LCXのProx、Mid、Distalといわれます。

そのとおりです。ぶっちゃけ正確な分類なんて手技をすすめる上では関係ないんです。

どこを治療しているか、どういう戦略を立てているのかを、治療にあたるチームが共有できていれば問題ないんです。

大雑把な欧米の話でしょ?と思うかもしれませんが。日本でも同じです。LADの真ん中のあたりの病変〜とか、ダイアゴ分岐部distalの病変〜とかそんな感じで進められます。

最低限の共通認識や、治療成績の統計処理に際して分類しやすいように作られたものとおもって良いと思います。

だからといって、この分類を全く知らずに臨床に望むのは最低限の知識もないということですので、しっかりと覚えましょう。

#ってなに?

冠動脈の表記でよく目にする「#」ですが。SNSと同じハッシュマークです。ナンバーサインといわれ、シャープとは異なります。循環器領域ではセグメントと読み、#6と表記されていれば、冠動脈セグメント6を指し、LADproximalか!となるわけです。

実際の冠動脈造影

参考の冠動脈造影を見ておわかりの通り、AHAの分類の例にされているシェーマと完璧に一致した冠動脈はありえません。身長や、顔の形が異なるように冠動脈にも人それぞれ「カオ」があります。何度も何度も造影を見て冠動脈に対する理解を深めましょう。

まとめ

  • AHAはアメリカの心臓学会のこと
  • AHAは冠動脈を15個にわけて考えた
  • SCCT分類もあるけどあまり使われない
  • ぶっちゃけ欧米では、番号すら使われない
  • でも、しっかり覚えないと日本ではなに言ってるかわからない
  • 人それぞれ冠動脈は個性がある。
  • 狭窄度についてはまた今度

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