本日は 末梢動脈カテーテル のお話です。
EVTとは
末梢動脈カテーテル治療のことをEndoVascular Treatment: EVT (いーぶいーてぃー)と呼びます。
従来、経皮的末梢血管インターベンション(percutaneous peripheral intervention:PPI)と呼ばれたり
バルーン治療のみであれば経皮的血管形成術(percutaneous transluminal angioplasty:PTA)と呼ばれていましたが
いまでは末梢血管に対する血管内治療を EVT と一括で呼びます。
ちなみに末梢血管とは冠動脈と大動脈以外のすべての血管の事を言います。脳、腎臓、腸領域の血管すべて末梢血管です。
ガイドライン上もPPIという単語は記載されなくなり、EVT に置き換わっているので EVT と呼んでおけば間違いないでしょう。
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン:https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2015_miyata_d.pdf
臨床ではPPIでもPTAでもEVTでも実際通じるわけですが、PPIというと胃薬であるプロトンポンプ阻害薬の方が一般的ですし、PostPacingIntervalと呼ばれる不整脈治療で用いられる手技とも混同されるので、EVTという呼称の方がわかりやすい側面があります。
Endoって
ここで、小ネタです。EndoVascularのEndoですが、日本語読み的にはエンドなわけです。
エンドと聞くと「終わり」や「終末」とかが、イメージ的に思い浮かびますが、そうすると、末梢って英語だとエンドなのか?と思ってしまいます。まぁなんとなくわかる気もしますが、実際には間違っています。
Endoは「内部」、「内」という意味です。
例えば、エンドトキシン:内毒素もこのEndoです。Endo(内)とToxin(毒)の組み合わせですね。
PCIとEVTの違い
冠動脈と末梢血管なんだから違うに決まってるやろ!と思うとおもいます。そのとおりです。
手技に関する明確な違いがあります。それは、ガイディングカテーテル(G.C.)が必要あるかないかという違いです。
対象血管に直接 シース を挿入できたのであれば、極論ワイヤーとバルーン、ステントだけで治療が行えるわけです。
でも、冠動脈に直接 シース をさすことができませんよね。
だからこそG.C.を使用してそこまでの道を作ってあげるわけです。
G.C.ありなしの違い
ではこのG.C.の違いは何に影響するでしょうか。
G.C.が挿入されているということは、G.C.の内腔分でしか、デバイスを出し入れできないわけです。
G.C.の外径は シース の内径に対応しています。一方、7Fr.G.C.の内径は6Fr シース 内径と同等です。
つまり、PCIと同じ太さ、数のデバイスを挿入するとしたら、EVTの方がより低侵襲に行えるわけです。
6Fr シース (TERUMO) | 7FrG.C.(NIPRO) | |
---|---|---|
外径 | 記載なし(実測2.5mm程度) | 2.42mm |
内径 | 1.98-2.10mm | 2.05mm |
このFr.問題はカテ入り始めの人が最初にぶつかる問題ですので、今後各社まとめた表を作ろうかなと思っています。
シースレスとは
さて、上記問題から シース とG.C.を合体させたモノを作ればいいじゃん!と考えた人がいるわけです。
で、実際にシースレスガイドと呼ばれるものが登場しています。
シースがなくてもガイドとして機能するデバイスです。
どこがちがうのか
シースとG.C.の大きな違いは Yコネ クターをつけることができるかどうかです。
そもそも、G.C.には逆止弁がなくYコネクターを装着しないと逆血してきてしまいます。
そこで、Yコネクターが装着できるよう凹型コネクター(メス)になっています。
一方、シースは逆止弁が標準でついており、Yコネクターをつけずとも逆血してこないため、多くはこれが装着できないようになっています。
シースレスガイドでは、ガイドという体をなしているため、Yコネクターが装着可能です。
冠動脈用にJL4.0といったシースレスガイドも存在していますが、シースと同じ形の物が多いです。
なぜYコネクターじゃないとだめなのか
シースの逆止弁構造
シースの逆止弁は、花びらのようなものを複数個つなぎ合わせ、先に行くほど細くなるような形状をしています。例えるならうなぎの罠の入り口のような形です。
そのため、一つの花びらが壊れるとすぐ逆止弁として機能しなくなりますし、全体的に押し広げるように太いモノを入れるとすぐに弁が壊れてしまいます。
Yコネの構造
一方OKAY Yコネ (おーけーわいこね)に代表される Yコネ は巾着袋を締めるような構造で逆血を防止するため、壊れることが少ないです。
しかも、巾着袋なので、それを緩めることで逆血させることが容易です。
カテーテルにおいて、わざと逆血させることは、空気を送り込まないようにするために、非常に重要で、エアー抜きと呼ばれます。
だから、治療では必ず Yコネ をつけるわけですね。
まとめ
- 末梢血管の血管内治療はEVTという
- Endoは内部
- シースの内径と、G.C.の外径を理解しよう
- Yコネって大事
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