半分備忘録的な内容です。忘れがちな各メーカーの機能の詳細について説明します。
本日はAbbottの AMS について解説していきます。
AMS とは
こちらで少し触れていますが、
そもそも AMS (オートモードスイッチ)とは
ペースメーカーがDDD(R)モードまたはVDD(R)モードで作動しているときに、上室性頻拍性不整脈に同期して高いレートで心室ペーシングすることを防止する機能。
です。
早いレートのAT(心房頻拍)やAF(心房細動)がおきた場合に、ペースメーカーは生理的(運動や精神的ストレス)に早いレートを必要としているのか、判断できず同期し心室ペーシングをしてしまいます。
これを防ぐために、設定された心房頻拍検出レートを超えると自動でモードを変更(モードスイッチ)します。
基本設定 | スイッチ後の設定 |
---|---|
DDD(R) | DDI(R) |
VDD(R) | VDD(R) |
別に、これはAbbottに限ったことではありません。どのメーカーもあります。
AMSの設定場所
パラメータタブのAT/AF検出&レスポンスから設定を変更できます。
触るとこんな感じ
設定項目
AMSの設定項目は大きく3つあります。
オートモードスイッチ
機能を入れるか入れないか。
入れる場合モードスイッチする設定は、DDIRかDDIかです。
ちなみに、基本モード設定がDDDでもDDIRにモードスイッチする設定が可能です。
心房頻拍検出レート
心房移動平均レートインターバル(Filtered Atrial Rate Interval:FARI)が心房頻拍検出レート(Atrial Tachy Detection Rate:ATDR)を超えるとAMSが作動する。
検出レートの設定です。
AMS基本レート
AMS作動時の基本レート。
上室性不整脈の場合、1回心拍出量(Stroke Volume:SV)にとって要であるAtiral kick(えーとりあるきっく:心房収縮)が良好ではないため、基本的には一回心拍出量は低下します(およそ20%ともいわれる)。
そのため、ペースメーカーの基本レートとは個別にレートを設定(基本レートより早いレート)することで心拍出量(Cardiac Output:CO)を補うことを目的としています。
心拍出量:CO=1回心拍出量:SV×心拍数:HR
臨床的には、基本設定のままいじらないことが多い気がします。
アルゴリズム
どのようにAFと判断するのかがポイントです。AFと判断できればAMSを作動させるだけdす。
FARIとモード移行条件
心房移動平均レートインターバル:Filtered Atrial Rate Interval(FARI)
直近4拍の移動平均にて算出される基準となるFARIの求め方。
4拍前 | 3拍前 | 2拍前 | 1拍前 | |
P-Pインターバル | 800ms | 850ms | 900ms | 950ms |
この場合 (800+850+900+950)/4=875ms *P-Pインターバル=p波から次の拍のp波までのCL(Cycle Length:さいくるれんぐす)
これと比較を開始し、移動平均ではなく計算でFARI値を算出し、この結果をもとにAFと判断する。
つまり単純に移動平均で求められているわけではない。
基準となるFARI値からAFの判断材料とされるFARI値の計算アルゴリズムは
現在のP-Pインターバルによって変わります
現在のP-Pインターバルが基準となるFARIより短い場合 FARI値=基準となるFARI-39ms
現在のインターバルが基準となるFARIより長い場合 FARI値=基準となるFARI+23ms
上の表の場合:FARI | 現在のP-Pインターバル | 増減 | FARI値 | 移動平均FARI値(仮定) |
875ms | 800ms | -39ms | 836ms | 875ms(850+900+950+800)/4 |
875ms | 900ms | +23ms | 898ms | 900ms(850+900+950+900)/4 |
この計算により求められたFARI値が「ATDR=180/min≒333ms」より早くなった場合AMSが作動します。
モード復帰条件
計算により求められたFARI値が最大トラッキングレートもしくセンサ指示レートよりも長くなると、AMSから元の設定にもどります。
なぜFARIを使うのか?
PACでのモード移行を防げる
もしP-Pインターバルのみで使用するとその値がATDRに達した瞬間にAMSが作動するのでPACに反応しすぐAMSが作動してしまいます。
PAFに対して反応が早い
例えば、PACでモード移行しないようにするために、任意の総拍数の中でATDR以上の回数が8割を超えた場合とする。とした場合と比べるとPafに対するモードスイッチが早い可能性がある。
具体的にいうと
任意の総拍数ある程度のN数がいると考えられるので、仮に30拍としたとすると、
FARIの場合。前拍より短いレートが続いた場合理論上は、ATDRが333msであれば最短14拍でモード移行します。
実際には、AFの場合大概レートが不安定なので、14拍で移行することなんてほとんどありませんし、任意の総拍数を14拍としたら11拍でモード移行するので、これに関してはAbbottさんが勝手にいってるだけに感じます。ざっと探したところペーパーも見つけることができませんでした。おそらくこれを採用するにあたるペーパーがあると思うのですが、、、
不整脈が止まってもしばらく様子をみてくれる
FARI増減値をみると遅くなった場合は、早くなった場合に比べ短い(+23ms)しか伸ばしません。なので、不整脈が止まってからしばらく様子をみてモード移行をしてくれるわけです。
f波をアンダーセンスしている場合もありますので、モード移行がゆっくりなのは良い思います。
臨床での注意点
良い点ばかり話ましたので良くない点を少々。
全くAMSが作動しない
P-PインターバルがFARIと比較し長くなったり短くなったりした場合であっても、AMS移行するようにするよに考えられたアルゴリズムのはずですが、遅いレート帯やレートの揺れが酷い場合FARIが仇となりAMS作動が全くしないケースがあります。
こういった場合は、大概エピソードにも残っていないこともあります。(ATDRがノミナル値の180/minの場合が多いため)
Rubenstein III型には気をつけろ
Rubenstein III型:徐脈頻脈症候群の場合AMSが作動しないことを経験します。
ちゃんとATDRを植え込み時にでている不整脈レート程度には設定しましょう。早ければ問題ないですが、遅いときこそ必ず遅めの設定にしましょう。
関連文献
Abbottのレビューがあったのでどうぞ
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