ペースメーカーとは
ペースメーカー とは、電気刺激により心臓を収縮させるものです。基本的には設定した心拍数より低くなったときに収縮を促します。
促す対象は右心房と、右心室のどちらかか、あるいは両方です。
ペースメーカーの呼び方
基本的なことからまず、臨床ではペースメーカーのことを共通認識でデバイス(device)と呼ぶことがあります。これはCIEDs(Cardiac Implantable Electronic Devices:植え込み型心臓電子機器)からきています。これ自体はシーズとよみます。
体内に植え込んで、ペーシングや、不整脈治療、心臓同期療法を行うものすべてをリズムデバイス、なかでも不整脈を行うものをタキデバイス(tachy dvice)、ハイパワーデバイス(high power device)、ショックデバイス(shock device)などと言います。もちろん、ペースメーカーや、ICD,CRTといった言い方もします。
DDDの意味
ペースメーカーの基本的な表記について触れていきます。
1文字目は刺激、2文字目は検出、3文字目は応答モード
刺検応答(しけんおうとう)って覚えてました。
刺激(ペーシング) | 検出(センシング) | 応答モード |
A(atrium:心房) | A(心房) | I(Inhibit:抑制) |
V(ventricle:心室) | V(心室) | T(Trigger:同期) |
D(Dual:両方) | D(両方) | D(両方) |
O(Observation:なにもしない) | O(Observation:なにもしない) | O(Observation:見てるだけ) |
つまりDDDはどっちも刺激できるし、検出もできる。さらに抑制も、同期もできる。同期というのは、心房の収縮を検知して、心室が動かなかったら刺激するということ。心房に同期して心室を刺激するから同期。しかし、臨床ではほんとんどT単独では使いません。なぜならペースメーカーとは別にCRT(心臓同期療法)というものが存在しており、これは同期を目的に行うデバイスです。
感覚的に同期は必要があるとわかりますが、果たして抑制はいるのでしょうか。
右室ペーシングは予後を悪くするというデータがでており絶対に必要です。具体的には新規心房細動の発生を誘発する、心室のリモデリングに繋がるなどいわれてます。
関連文献(右室ペーシング関連論文)
- Dual-chamber pacing or ventricular backup pacing in patients with an implantable defibrillator: the Dual Chamber and VVI Implantable Defibrillator (DAVID) Trial https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12495391/(心不全による入院と死亡率増加)
- Minimizing ventricular pacing to reduce atrial fibrillation in sinus-node disease https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17804844/(持続性心房細動の増加)
- Is dual-chamber programming inferior to single-chamber programming in an implantable cardioverter-defibrillator? Results of the INTRINSIC RV (Inhibition of Unnecessary RV Pacing With AVSH in ICDs) study https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17179021/(心不全による入院と死亡率増加)
- Ventricular pacing or dual-chamber pacing for sinus-node dysfunction https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12063369/(慢性心房細動と心不全の増加)
DDD60/130とは
さて実際に臨床では、DDD60/130と言われて困惑される看護師も多いと思います。
本来、完全に洞不全である場合60でしか打ちません。(Rモード:RateResponseだと別。)
一方、房室ブロックの場合、自分で心房の興奮が行われますが、心室への伝導が悪いです。そのため自己の心拍数にあわせて心室を刺激してあげる必要があります。すると心拍数は60のみでなく、100回だったり幅がうまれるわけです。しかし、130回以上であると、上室性の不整脈である可能性がたかまりますし、正常とはいえないわけです。ですから、130回をこえると同期して心室を刺激しないようにしています。
そういったことから60-130と幅が設けられているわけです。
よく患者様疑問に思われて質問されてくる内容と一緒です、「私ペースメーカーいれて60回で打つようになっているといわれたのですが、家で測ると80回とか表示されます…これって異常ですか?」
もうおわかりの通り正常です。
モードの使い分け
臨床で使われる設定は
AAI,VVI,DDD,DOO,VOOの5つ
AAI->SSSのみの患者(ほとんどいれない)
仮に、洞不全症候群(Sick sinus syndrome:SSS)のかたに植え込みをするとします。この場合心房が動かないですが、房室伝導は問題ないはずなので、AAIで良いはずです。しかし、SSSを患っている患者様は一定数房室ブロックや心房細動に移行するといわれています。
そしてそれが、移行する人、移行するタイミングがわからないという問題があります。かりにAAIだけで良いとして、心房に1本のリードだけをいれたとします。ある日、房室ブロックを合併し亡くなりました。これでは、ペースメーカーが入っている意味がありませんよね。
もし気づけたとして、さらに心室リードを追加するために手術をするのは患者様にとって、身体的にも、金銭的にも負担が大きいです。
加えて人間は心室さえ動いていれば急に亡くなることはありません。だからテンポラリーペースメーカーは心室にリードを入れることがほとんどなわけです。(実は心房にいれるテンポラリーもあります)
上記のことから、心室のみにリードを入れる選択はあっても、心房のみいれることはほとんどないです。
VVI->長期持続型心房細動
心房細動が止まる見込みのない方は最初からVVIのみを選択し、リードを一つだけいれることがあります。またDDDで植え込みをしていて、フォローアップで心房細動になった場合もVVIに変えます。どちらも電池を長く持たせたいからです。
DDD->長期持続型心房細動以外
これが第一選択です。基本これだと覚えてください。
DOO,VOO->OPE時、MRI撮影時等
さてDOO,VOOは特殊です。
これらはとにかく、打ち続けるモードです。電気メスや、MRI撮影時にリードへ電流がながれると、心臓が動いていると勘違いし抑制してしまいます。それを防ぐために同期もせずに、とにかく設定値で打つモードです。これの問題点は、自己がでてるかどうか確認しないのでRonTや自己とのフュージョンがありえることです。しかし、オペ中の場合が多いはずなので、致死性不整脈(VF)を誘発しても、すぐに対応できるので、問題はありません。むしろ刺激しないで心臓が動かない方が問題です。
まとめ
- ペースメーカー関連はデバイスと呼ばれる。
- 刺検応答のゴロで覚える
- 右室ペーシングは良くない
- モードは基本的にDDD
- RateResponseは次回説明します。
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