RateResponseとは
RateResponse とは、身体の動きや、精神的な変化など状況に合わせて心拍数を変化(応答)させる機能です。
リズムデバイスでのRateResponseの表記は、前回の記事同様にほとんどにDDDRといったように4つ目の文字が追加されます。
なかにはDDD-CLS(biotronik)のように独自のアルゴリズムをRateResponse機能とは別で呼ぶこともあります。
変時性不全 とは
変時性不全(chronotropic incompetence )や変時性応答不全と呼ばれますが、
変時性不全とは、心臓が、身体活動に対して心拍数を適切に調節できなくなってしまう病態のことである。
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K09966/
とされています。簡単にいえば、ずっと心拍数60で生活して苦しくないですか?という話です。
以前も少しお話しましたが、SSSの場合、最低心拍数を確保するようにしか動きませんので、運動しても心拍数は60のままです。
すると患者さんは苦しいですが、病態を理解していないケースが多く、「ペースメーカーという非日常を植え込んだせいでしょうがない。苦しいから動くのをやめよう」と、ADLが落ちていってしまうわけです。
特にICDといった致死性不整脈の除細動機能がついたものですと、電気ショックをうける精神的ストレスのため抑うつ傾向になることも示されています。
運動強度とKarvonen 法
変時性不全は具体的に運動強度を例にだすとよくわかります。そこで使われるのがKarvonen法(カルボーネン)
目標の心拍数={(220-年齢)-安静時心拍数}×運動強度(%)+安静時心拍数 (参考文献:https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/26/1/26_1_33/_pdf)
上記の式で表せられます。
ここで、運動強度とは、どの程度の運動量であるかを示しています。
仮に年齢を60歳、運動強度を50%、安静時心拍数を60としたとき目標の心拍数は110回となります。
本来このKarvonen法は各個人に対して定量的な運動強度を算出するために用いますので(理学療法は素人なので間違っていたら教えて下さい。)、心拍数が算出された値でない場合、目標の運動強度に足りていないとされより運動負荷をかけます。
一方、ペースメーカーで60回しか拍動しないとなると、単純計算で50回分の血流が身体に補えていないことが逆説的にわかります。
各社のRateResponseセンサー
メーカー | センサー |
---|---|
Medtronic | RateResponse 加速度センサー MVセンサー |
Biotronik | R:加速度センサー CLS:加速度センサー+CLSアルゴリズム(心内インピーダンス) |
Abbott | RateResponse 加速度センサー MVセンサー |
Boston Scientific | RateAdaptivePacing 加速度センサー MVセンサー(呼吸数、胸郭インピーダンス) (ACCOLADE,INGENIOのみ) |
Microport | RateResponse 加速度センサー MVセンサー |
各社大体加速度センサーとMVセンサーを用いています。これらは単純に加速度センサーだけでは正確に運動に応じた心拍数を実現できないという結果に基づき搭載されています。CLSは独自の心内インピーダンス測定方式(8心拍、250ms,216Hz)をもっており、他社製品におけるMVセンサーとは異なるとしています。(実際にはBostonも似ていて20Hzで刺激して計測している。)これにより精神的な心拍数上昇にも対応していると謳っています。
詳しくはこちらから。
CLSが透析患者さんの低血圧に有効だったという論文もあります。
CLSかRを選択できる理由
Biotronikでは、RとCLSどちらかを選択することが可能です。
これは、CLSの感度が良すぎるためです。CLSは、前述の通り精神的な心拍数の上昇にも対応しています。精神的な心拍数の上昇ですので、多くの場合動きがないときにも心拍数があがるはずです。しかし、これを不快に思う場合があります。こうした場合、CLSではなく、精神的なものに反応しないRに設定することがあります。
まとめ
- RateResponseは生理的に心拍数をあげる機能
- 変時性不全は運動しても心拍数があがらないことで起こる
- 各社センサーの特徴はあるが、RateResponseにおいてはBiotronikが良い傾向にある
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