前回のAMSに続き AF suppression についてです。
AF suppression とは
Ap(心房ペーシング)率を高めて心房細動が起こりにくくする機能
平たくいうと、なにがなんでもApにする機能です。
サプレッション。抑制の意味です。
拳銃の発砲音を消す(抑制)のに使用するサプレッサー(抑制器)と関連付けると意味を覚えやすいです。私見です。
ここで注意すべきは、心房細動の治療を目的としていないという点です。
つまりMedtronicのデュアルチャンバ(V型)の機能区分に分類される商品におけるReactiveATPを搭載した機器とは全く違うということです。
AF suppression の設定場所
AF関連ですので、前回のAMSと同じ場所にあります。
A suppressionは右側です。
設定項目
AF suppression の設定項目も大きく3つあります。
AFサプレッション
機能をいれるかいれないかを設定できます。
オーバードライブペーシングサイクル数
何拍のオーバードライブペーシングを行うかを設定できます。
15〜40拍(5拍刻み)のオーバードライブペーシングを行えます。
オーバードライブとは、自己のレートより早いレートでペーシング刺激をすることです。
最大AFサプレッションレート
最大どこまでレートを上げるかを設定することができます。
80〜180まで設定できます。
基本の設定における最大センサレート以上の値には設定できない仕様です。
アルゴリズム
これは非常にシンプルです。とにかくAs(自己心拍)にならないように、オーバードライブするにはどうするか?ということです。
AF suppression への移行(機能が有効になるには)
16サイクル内でAsが2回検出されたらAF suppression機能が作動します。
レート上昇の仕方
現在のペーシングレートによって上昇率が異なります。
現在のペーシングレート | オーバードライブレート |
---|---|
50 | 60 |
55 | 65 |
60 | 69 |
65 | 74 |
70 | 79 |
80 | 88 |
90 | 98 |
100 | 108 |
110 | 117 |
レート下降の仕方
いつまでもオーバードライブレートで打ち続けるわけにもいかないので、果たしてオーバードライブがきいているのか?を確認しないとなりません。
上記設定したオーバードライブペーシングサイクル数が経過後にレートリカバリーを行います。
100ppm以下でオーバードライブペーシングが行われている場合
1サイクルごとに12msずつペーシングレートを延長します。その間に、Asがあればさらにそのレートに対応したオーバードライブペーシングレートへ移行します。
Asがなければ、基本レートに到達した時点でレートの延長を停止します。
100ppm以上でオーバードライブペーシングが行われている場合
1サイクルごとに8msずつペーシングレートを延長します。
ADOPT
ここからは、本当にきくのかという話です。
A new pacemaker algorithm for the treatment of atrial fibrillation: results of the Atrial Dynamic Overdrive Pacing Trial (ADOPT)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12932592/
こちらの論文によります。
そのままAF suppressionありなしでAFがどれほど抑制されたかっていう内容です。
対象は洞不全症候群かつ心房細動の患者280人。
結果としては、Af減少率が有意(p=0.005)をもって減った(Af Burden reduction:25.03%)けど、エピソード数平均や、入院数などは変わらないようです。
AF suppression の注意点
大きな注意点は、CAVBの患者さんには絶対に設定してはいけないということです。
かならずApにするため、Ap100%、Vp100%になってしまいます。
電池的にも勿体ないですし、必要以上の上室ペーシングになるので、恐らく胸部症状もでてしまうので機能をいれないようにしましょう。
これを防ぐためにノミナル設定ではoffとなってる施設が多いと思います。
まとめ
- AF suppressionは、AFを予防する機能。
- 予防するために、なんとしてでもApにする。
- そのため洞不全症候群、AF持ちの患者様にいれるのが論文的にはベスト。
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